セラミックス、高融点金属のような本質的に脆性材料と考えられてきた材料の加工性を向上するためには粒界脆性を制御し超塑性を発現させることが有効である。本研究では超塑性を促進するための粒界設計・制御の基本原理を確立するために、個々の粒界の構造解析と粒界性格分布の統計的評価をうとともに、粒界構造解析を行ったバルク多結晶試料の機械試験を行い、微視的及び巨視的両面から超塑性特性を調査した。得られた結果の概要は以下の通りである。 (1)粒界設計制御による脆性金属多結晶材料の加工性の向上:結晶粒径および粒界性格分布を系統的に変化させた多結晶モリブデン試料を用いて破壊挙動と粒界微細組織との関連を調べた。破壊強度は粒径に対してHall-Petchの関係で表される依存性を示した。また破壊強度の粒径依存性は粒界性格分布に依存し、低Σ対応粒界の存在頻度が小さくなるほど粒径依存性が大きくなること、さらに粒径が一定の条件では破壊強度は低Σ対応粒界の存在頻度の増加とともに上昇することなどを初めて明らかにした。一方Al-Li系合金の超塑性変形に伴う粒界微細組織の変化、キャビティの発生と粒界三重点性格との関連を調査した結果、超塑性変形過程において粒界性格の変質が起こり、粒界すべりが起こりやすいランダム粒界の割合が増加するとともにランダム粒界が連結した粒界三重点において優先的にキャビティが発生することを見出した。これらの粒界微細組織の定量的評価を基に超塑性発現のための最適な粒界微細組織に関する基本原理を示した。 (2)セラミックスの粒界構造と超塑性変形挙動:微細粒SiC(7mol%Al_2O_3+2mol%Y_2O_3+1mol%CaO添加)の粒界構造を透過電子顕微鏡により観察し、超塑性変形の発現との関連を検討した。超塑性を示す試料においても25%程度の小角粒界と対応粒界が含まれており、超塑性変形により対応粒界の割合が減少する傾向にあることが認められた。また、Al_2O_3/TiC系の複合材料について、焼結温度やTiC添加量の異なる試料を作製し、超塑性変形挙動の検討を行うとともに、超塑性変形におけるTiC添加の役割を調べた。その結果、TiCを10mass%添加した試料の伸びが最も大きく、TiC添加量の増加にしたがってTiC粒子が凝集した組織となり変形中のAl_2O_3の粒成長を抑制することが明らかとなった。
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