研究概要 |
本研究は,材料の微視的変形・損傷・破壊機構とそのモデル化,粒状体モデルによる粒界塑性力学の開発,高温変形機構と微視組織変化等の研究に関して豊富な研究実績を持つ3名の研究者の緊密な協力により,広範囲の材料系に見られる超塑性現象を統一的に記述するための理論的枠組みを構築するとともに,これによって新しい超塑性成形・加工法の可能性を拓くことを目的とする. 本年度の最重要課題は,従来の現象論に代わって,超塑性変形の基本的な物理を記述する方法論を提案することであり,主な研究実績は以下のとおりである. 1.研究代表者 村上は,損傷力学と非弾性構成式理論に基づき,一般的負荷条件下の新しい超塑性変形構成式を開発した. 2.このとき,変形機構を粒界すべりとそれ以外の機構に分離するとともに,結晶粒と空洞の成長,ならびに変形に及ぼすそれらの影響を考慮した損傷発展式と変形構成式を定式化した. 3.研究分担者 相澤は,これまでに開発した粒状体モデルを基礎として,粒子間相互作用を直接解析するための新しい界面弾性ポテンシャルを導入した。 4.ガラス相あるいは液相の存在に伴う緩和機構を考慮し,微細結晶粒系をこのポテンシャルで結合することにより,超塑性材料をモデル化できることを示した.このモデルにより,超塑性材料のスイッチング・メカニズムならびにキャビテーション・メカニズムを考察することができる. 5.研究分担者 丸山は超塑性材料の高温変形機構と,加工硬化ならびに変形速度に及ぼすその影響を実験的に検討した. 6.この結果,多結晶では,粒界でのひずみ連続条件を満足する必要から,粒界の存在が加工硬化を促進する.高温では粒界すべりそれ自体がひずみに寄与するとともに,ひずみ連続条件からくる加工硬化も減少し,ひずみ速度はさらに上昇する.粒界すべりが超塑性変形速度に及ぼす影響を定量的に評価するには,これらのことを考慮するべきことを明らかにした.
|