研究概要 |
本研究は,材料の変形・損傷・破壊の微視的機構とその力学的モデル化の研究に関して豊富な研究実績をもつ4名の研究者の緊密な協力により、広範囲の材料系に見られる超塑性現象を統一的に記述するための力学理論を構築するとともに,これによって新しい超塑性成形・加工法の可能性を拓こうとするものであって,平成9年度は次のような研究成果を得た. 1)研究代表者村上は,超塑性変形中の空洞体積率と結晶粒径を内部状態変数とする内部状態変数粘塑性構成式理論を適用し,新しい多軸有限変形超塑性構成式を精密化した.このとき空洞の成長機構を検討し,その成長が主に母相の粘塑性ひずみ速度によるものとして,空洞成長の時間依存性を合理的に表現することができた. 2)研究分担者相澤は,超塑性鍛造における成形可能性を検討するための成形シミュレーターを試作するとともに,この応用として母材料の超塑性変形とポーラス材の焼結鍛造変形を同時に解析し,ミクロなポアの収縮変形を求め得ることを示した.この他,AL‐Ni‐Zr基材料を対象とし,元素混合粉末よりナノ粒子分散非平衡相材料を創成し,その高温特性を評価した. 3)研究分担者丸山は,微量の液相を分散させたAl‐Bi合金を用いて,高速超塑性における粒界及び界面液相が応力緩和過程に及ぼす影響とその機構を明らかにした.また応力緩和機構は液相による蓄積転位の消滅によって生じ,その結果キャビテーション破壊の遅延によって伸びが増長することも明らかにした. 4)研究分担者徳田は,平成9年度新たに購入した複合負荷試験機を用いて,各種負荷条件における超塑性変形実験を行い,基本外的因子(温度,応力,ひずみ速度など)の影響を調べた.この結果,工業的に重要であるバルクな変形においては,応力テンソルの3つの基本不変量が極めて複雑に影響していることを明らかにするとともに,これを微視的内部構造変化の観点より検討した.
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