結晶粒界すべりの素過程は多くの場合粒界内部での転位の運動であると認識されている。しかし、転位の運動を支配する因子についての理解は未だ十分ではなく、粒界すべり機構に立脚した材料設計が可能な段階にはないのが現状である。本研究は、一般大角粒界を対象に、純アルミニウム双結晶試料を用いて粒界すべりの進行中に応力を急変した場合の結晶粒界すべり挙動を調べ、転位運動の支配因子を解明することを目的としている。 実験対象とした計5種類の一般大角粒界の粒界すべり量-時間曲線は、例外なく負荷時間の増大と共に粒界すべり速度が低下する、いわゆる粒界すべり硬化を示した。硬化挙動は、同一温度、同一応力下でも結晶粒界の種類に依存して変化した。粒界すべりの進行中に応力を急増させると粒界すべり速度はいずれの粒界でも急増したが、応力の急増による粒界すべり速度の変化量は応力を急増する直前の粒界すべり速度に依存していた。急増直前と直後の粒界すべり速度の関係は外力のべき乗則では表現できないことが分かった。粒界すべりの進行中に応力を急減した場合にも、応力を急減する直前の粒界すべり速度に依存して、粒界すべり速度の低下あるいは粒界すべりの停止が生じた。これらの結果は粒界内部での転位の運動に内部応力が大きな役割を果たしていることを示唆している。平均有効応力と粒界すべり速度の関係を調べた結果、両者にほぽ比例する関係があることがわかった。
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