研究概要 |
医療デバイスの生体適合性は、血液や組織と接触する極表面における細胞レベルでの化学組成、と構造に大きく依存する。短期使用目的のデバイスに生体適合性を付与する手段として非電荷水溶性高分子の共有結合によるカップリング法やグラフト重合法などの表面修飾技術が開発されている。しかし、適用基材の制約、修飾部位の限定、修飾量の調節、あるいは基材内部の損傷や物性変化などに問題点を有しており、デバイス修飾への実際的応用はほとんど行なわれていない。 本研究ではベンジルN,N-ジエチルジチオカルバメート(イニファタ)の光反応性を利用してビニルモノマーの表面グラフト重合を行った。XPSスペクトル分析、水晶発振子マイクロバランス(QCM)、水接触角測定、および原子間力顕微鏡(AFM)観察より、グラフト重合は紫外光照射によってのみ開発され、グラフト量は照射エネルギー(光量と時間)の増加に伴ってほぼ直線的に増加することが示された。顕微鏡観察より、グラフト領域は微細な照射部のみに限定されることが示された。光エネルギーは光ファイバーで誘導することができるので複雑な形状をした成形加工されたデバイスの特定部位に対して修飾することが可能である。本表面グラフト重合法はXY平面(グラフト領域と密度)およびZ軸(グラフト鎖長)の精密制御を可能にした最初の方法であり、人工臓器などのデバイス表面の精密設計に応用でき、細胞レベルでの微細領域での傾斜機能高分子表面を作成するための基盤プロセス技術が開発できたと結論できる。
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