研究概要 |
本研究では,利用者が様々な視点からオブジェクトを取り扱い,視点に応じたビューを実現するため,視点に基づく属性を実行時に生成する機構,視点を切り替えることで異なるオブジェクトの属性構造を実現する機構、及び視点と視点に依存する属性構造を収納する機構を提案した. まず,視点と視点に依存する属性を収納するため,階層構造グラフを導入した.階層構造グラフを用いて目的に応じた属性構造を持つ仮想オブジェクトの定義,及び視点間の関係の階層表現が行われた.階層構造グラフは利用者の操作に応じて生成される.その上で,視点に応じた属性構造を持つオブジェクトのビューを与える仮想オブジェクト,及び同一観点から統一的に仮想オブジェクトを取り扱うためのスコープの概念を導入した.スコープは視点階層における視点の切替操作を提供する.利用者は,階層構造グラフに基づくオブジェクトを扱うことで,対象となるオブジェクトの多様な属性構造の実現,階層的な視点間の関係の表現を実行時に行える. 次に,スコープ内の仮想オブジェクトと視点グラフからなる利用環境を規定した.この環境のもとで階層構造グラフを段階的に構築するための利用者の操作の間接的な制限,追加機構などを検討し,仮想オブジェクトへの属性付与のためのルール,グラフの精細化におけるルールを与えた.これらにより,スコープの相互独立性が保たれ,複数の利用者による協調作業が可能となる. 更に利用者の更新操作を矛盾なく階層構造グラフに表現するためのアルゴリズムを与えた.このアルゴリズムは,仮想オブジェクトへの属性付与,カテゴリーの新規生成,視点間の上位/下位の関係の切り替えなどの利用者の操作に応じて,段階的に階層構造グラフを形成する手法を提供する.手法の有効性を確認するため,電子メールをデータとしてプロトタイプシステムを作成した.
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