研究概要 |
1.8-メチレンビシクロ[3.2.1]オクト-6-エンと関連骨格に組み込まれたオキシコープ系の陰イオン促進シグマトロピー転位反応 1,5-ジメチル-8-メチル-2-ビニルビシクロ[3.2.1]オクター2-オール(A)およびオクト-6-エン-2-オール(B)の2位に関する立体異性体、計4種類を合成した。シス-オキシコープ系を持つAをTHF中でKHで処理し、60℃に加熱すると[5-8]縮環化合物が優先的に得られた。一方、トランス系のAは、同様な条件では反応しなかった。しかし、クラウンエーテルを添加して加熱還流すると反応が起こり、[5-6]縮環化合物とビシクロ[5.2.1]デカン誘導体(C)が得られた。この[5-6]縮環化合物は[1,3]転位生成物で、移動基の立体は保持である。Cは二炭素環拡大生成物である。Bのエキソメチレン部を含むシス-オキシコープ系化合物は0℃でKHと反応させると、直ちに[5-8]縮環化合物になった。トランス系化合物も同条件で反応し、[5-6]縮環化合物と二炭素環拡大生成物が得られた。不飽和二炭素橋の存在は、反応経路の選択には関与せず、転位反応の速度を著しく加速した。縮環化合物は、ともにシクロペンタジエン部分を持っており、種々の変換が期待できる。 2.ビシクロ[3.2.1]オクト-6-エンに組み込まれたオキシコープ系の陰イオン促進シグマトロピー転位反応 不飽和二炭素橋が直接関与するオキシコープ系の陰イオン促進転位反応を取り上げた。シス-オキシコープ系化合物からも[1,3]転位が起こり[5-5]縮環化合物が得られた。橋頭位の置換基をフェニル基にすると、容易に転位が進行した。一炭素橋にメチル基が二個ある系では、よりも低温で進行し、立体加速を示唆している。以上のように、架橋系の陰イオン促進転位で、三種の縮環系が得られることが判明した。同時に、反応が進行しやすい系のデザイン法や立体加速など、今後、合成反応として展開するための重要な手がかりを得た。
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