アルカロイド骨格を含む含窒素環状化合物の合成法として、遷移金属触媒を用いるポリハロゲン化合物の環化反応を開発した。窒素上に置換基を有するN‐アリルトリクロロアセトアミドを、塩化第一銅とビピリジンからなる触媒で処理すると、容易に炭素-塩素結合の解裂と分子内に存在する炭素-炭素2重結合への付加反応が起こる。実用的合成法の確立を目指した反応条件の検討により、温和な条件下での効率的な環化条件を見い出した。この知見をもとに、N‐アリルトリクロロアセトアミドの環化反応により生成する、α、α、γ-トリクロロラクタムのα位の炭素-塩素結合の活性化とα-オレフィンへの付加反応を、同様な触媒を用いて検討した。とくに、オレフィンとしてアリルトリメチルシランを用いた場合、付加反応により生じた化合物をシリカゲルで処理することにより、容易なクロロトリメチルシランの脱離がおこり、ラクタムのα位にアリル基を導入するよい方法となることがわかった。反応条件の最適化をおこなうとともに、生じたアリル化合物の立体化学を検討した。可能性のある2つの立体異性体のうち、トランス体が9:1程度の比で優先的に生成していることが明らかとなった。このトリクロロラクタムとオレフィンとの反応を、分子内反応へと応用した。N‐ベンジル‐N‐ゲラニルトリクロロアセトアミドを同様な触媒で処理すると、5員環と6員環からなる双環性のラクタムが一段階で生成した。反応は本質的に2段階反応であり、温度を下げた実験において、まず、5員環の生成がおこったのちに6員環が生成することが中間体の捕捉により明らかとなった。
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