研究概要 |
申請者は、コレステロールの代謝に関わる酵素であるアシルCoA:コレステロールアシル転移酵素(ACAT)を強力かつ選択的に阻害するピリピロペンAの全合成を達成した。すなわち、テルペン骨格とピリジノ-α-ピロン環とをルイス酸存在下カップリングさせることによりピリピロペンAの炭素骨格を立体選択的にしかも一挙に構築する非常に効率的で簡便な合成法を確立した。尚、テルペン骨格は、(+)-Wieland Mieschler Ketoneより立体選択的なホルミル化とカルボニル化反応を鍵反応とし、更に2つの立体選択的還元により合成した。またこの全合成における鍵反応であるカップリングについて詳細に検討した結果、ルイス酸として塩化アルミニウムが最もよく、またプロトン酸としてトリフルオロ酢酸が適していることを明らかにした。 また、E,E-ファルネシルアセテートを出発原料としてSharplessの不斉ジヒドロキシル化とポリエン環化反応を鍵反応として、生合成類似の合成法によりピリピロペンEの全合成も達成した。 次に、この全合成を利用して種々誘導体を合成してピリピロペンAの構造活性相関を明らかにした。その結果、ピリジン環とα-ピロン環はACAT阻害活性に必須であることが明らかになった。一方、4つの水酸基については、7位水酸基はバレリル基が最もよく、13位水酸基はフリーであることが活性発現に重要である事が明らかになった。更に、1位および11位をベンジリデンアセタールで保護したPR-109は最も強力なACAT阻害活性を示し、ピリピロペンAより15倍強力な阻害活性を示した。また、11位をメシル化したPR-86は、マウスを用いた動物実験においてピリピロペンAより約10倍強力にコレステロールの低下作用を示した。
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