研究概要 |
半導体や金属のナノクラスターは固体から分子へ向かう中間的な特性を持つ物質であり、光学的性質がそのサイズに依存する量子サイズ効果を示すことが知られている。このようなナノクラスターの特性を精密に評価するとともに,応用としてサイズ効果を利用するためにはクラスター自身の粒子径を制御し、かつ単分散とすることが必要である。本研究では半導体であるCdSナノクラスターをキレート高分子中に分散させた新規ハイブリッド高分子組織体を合成するとともに,ナノクラスターの粒子径とその分散特性を制御することを試みた。 イミノ二酢酸基を有するキレート樹脂にCd^<2+>を吸着させ,ここにNa_2S水溶液を添加することによりCdS/高分子ハイブリッド組織体を合成した。その結果、樹脂中に生成するCdS粒径やその分布は反応溶液であるNa_2S水溶液の濃度に大きく依存することが明らかになった。すなわち,比較的に濃厚なNa_2S水溶液から合成したCdSは樹脂中に均一分布しており,その粒径は約3nmであった。一方,希薄溶液から合成した場合には,樹脂表面の約5μm層には3nm程度の超微粒子が生成しているが,それよりも内部ではCdSが凝集して5〜7nmの微粒子が生成していることが示された。本研究により,キレート高分子を半導体超微粒子のホスト材料として用い,CdSの粒径とその分散特性を制御することが可能になった。今後,この結果に基づいて,超微粒子の光制御合成へと展開する。
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