研究概要 |
申請者がこれまでに開発してきた高選択的不斉反応を基盤として、これらを重合反応に応用することによって、新しい人工光学活性高分子化合物の合成に関する研究を以下のように進めた. 重合反応に応用可能な不斉反応のなかで、不斉Diels‐Alder反応については、種々の高選択的不斉触媒が開発されており、C‐C結合形成反応としても重要な反応であることから、本研究ではこの反応をとりあげた.Diels‐Alder重合については、すでに多くの報告があり、ラダーポリマー等ユニークな構造を持つ高分子が数多く合成されている.しかし、Diels‐Alder重合におけるキラリティーの導入については報告されていないため、本研究ではまずこの点を明らかにすることを目的とした.不斉Diels‐Alder重合に用いるモノマーとしては、ビスジエン型(DE‐DE)モノマー、ビスジエノフィル型(DP‐DP)モノマーを種々合成した.DE‐DE型モノマーのジエン部分にはフルフリル基、ブタジエニル基を導入した.一方、DP‐DP型モノマーのジエノフィル部分にはα,β‐不飽和カルボニル化合物を種々検討したが、Diels‐Alder重合が、ほとんど進行しないことがわかった.DP‐DP型モノマーとして、ビスマレイミドを用いることによって、ルイス酸存在下Diels‐Alder重合が進行し、分子量1万以上の高分子を得ることができた.不斉修飾ルイス酸を触媒として用いることで最高[Φ]_<435>=578゚の分子旋光度を有する光学活性高分子を合成することに成功した.
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