研究概要 |
高分子微粒子の表面に溶媒和層があるとき、層の構造にゲル型とヘア型がある。ゲル型の層の架橋密度をゼロにしたものがヘア型層の構造に相当する。本研究では、(1)ゲルまたはヘアが温度応答性高分子でるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)であるマイクロスフェアの、転移温度を挟んでの温度応答挙動の不連続性、(2)ヘアがDNAである粒子のバイオアフィニティの検討とその応用、(3)ヘアが温度応答性ペプチドからなる粒子の作製とその特性評価を目的とした。 (1)では、PNIPAM鎖をマイクロスフェアに、あるいは酵素をPNIPAM鎖に、固定することは必然的にPNIPAM鎖のエントロピーを減少させ、それを補償するため転移温度の上昇がもたらされること、この転移温度のシフトを利用するとユニークなバイオリアクターが構築できること、PNIPAMゲル層では架橋密度を下げるほど転移温度における物性の不連続性が増すこと、その現象を水和層の柔らかさ、電荷密度でも定量的に評価できること、などが明らかにされた。(2)では、タンパク質等の非特異吸着を受けにくい高分子マイクロスフェア上に20塩基程度の長さの一本鎖DNAを固定したものが相補的なDNAと点変異DNAを識別できること、この場合も固定されたヘア鎖がコンホメーションの束縛を受けることが選別能の向上をもたらしたと考えられること、この特性を利用するとDNA疾患の早期発見が可能になることを明らかにした。(3)では、バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン(VPGVG)を合成し、それを重合し、得られた分子量約9,000のポリVPGVGをマイクロスフェアに固定した。次いでそのヘアの末端に生体特異成分を固定し、アフィニティ材料として利用することを試みたが、目下良好な結果は得られていない。生体特異成分の選択から再思考する。
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