研究課題/領域番号 |
08247206
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大塚 洋一 東京大学, 低温センター, 助教授 (50126009)
|
研究分担者 |
島田 宏 東京大学, 低温センター, 助手 (60216067)
|
キーワード | 一電子帯電効果 / 微小トンネル接合 / 単電子デバイス / 単電子トランジスタ / 巨大磁気抵抗 / クーロン振動 / 磁気クーロン振動 / 強磁性 |
研究概要 |
これまでの実験で、微小な接合面積をもつNi/NiO/Coトンネル接合が2次元的に配列した系の電気抵抗を測定し、一電子帯電効果が支配的となる極低温・低バイアス電流の下では保磁力差型の磁気抵抗が最大40%に達するほど大きくなることを見いだしていた。この磁気抵抗の巨大化の原因をはっきりさせるため、より単純な単一電子トランジスター(SET)構造を強磁性体で作製し、T=20mKにおける電流・電圧特性の磁場、ゲート電圧依存性等を測定した。 試料となるSETは、島状電極がCo、ソース、ドレイン電極がNiでできており、ソース・ドレイン各電極と島状電極とは接合面積約0.02μm^2のNiOのトンネル接合でつながっている。これはSi_3N_4薄膜を微細加工して作った蒸着マスクを用い、斜め蒸着法によりSi基板上に作製した。 この試料のソース・ドレイン抵抗を様々なソースドレイン電圧、ゲート電圧、磁場に対して調べ、以下の知見を得た。 (1)高温においてスピンバルプ効果による約4%の磁気抵抗を示す。 (2)一電子帯電効果が支配的となる低温で、磁気抵抗は40%程度まで巨大化する。 (3)低温でも高バイアスにおける微分抵抗に見られる磁気抵抗は高温とほぼ同程度である。 (4)ゲート電圧による明確なクーロン振動を示す。 (5)SETのオフ抵抗は巨大磁気抵抗を示すのに対して、オン抵抗には巨大化は見られない。 (6)磁場によってクーロン振動の振幅のみならず位相が変わる。則ち、外部磁場によってSETのスイッチが起こる(磁場クーロン振動)。 このうち、特に(5、6)はこれまでに報告のない新しい発見である。磁気抵抗の巨大化には高次のトンネル効果による有効帯電エネルギーの減少が、また磁気クーロン振動については強磁性物質中の各スピン状態に対応する状態密度の差によって生じる化学ポテンシャルの磁場による変動が原因するものと考えている。
|