本研究では、単電子デバイス構造製作時の結晶成長や加工において問題となるラフニングや、デバイスの長時間安定性にとって問題となるナノ構造やステップ構造の熱的揺らぎについての知見を得ることを目的とし、統計力学に基づいた解析、及びSi表面のSTM観察を行なった。 まず、熱平衡状態における微斜面上の原子ステップの揺らぎの性質をSolid-On-Solid(SOS)モデルに基づいたモンテカルロシミュレーションで調べた。SAステップ及びSBステップの2種類のステップが交互に存在するSi(001)表面に対して、熱平衡状態のシミュレーション像と実際の表面のSTM像におけるステップのゆらぎを比較することにより、結合エネルギーをおよそε(SA)=0.15eV、ε(SB)=0.046eVと見積もった。 熱平衡状態以外では、MBE成長時における表面のカイネティックラフニングと成長条件の関係や、Si(113)表面におけるステップバンチングの時間依存性について調べた。MBE成長のモンテカルロシミュレーションでは表面マイグレーション距離に応じてバリスティックデポジション→3次元成長→レイヤーバイレイヤーモード→ステップフローモードと変化する様子を観察した。 また、実際にナノ構造の揺らぎが電気的特性に与える影響を調べるための準備として、AFM探針を用いたSi表面やAl細線の酸化加工を行ない、幅20nm長さ1μmの細線を作製した。
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