研究分担者 |
工藤 一嘉 東京大学, 地震研究所, 助教授 (50012935)
岩田 知孝 京都大学, 防災研究所, 助手 (80211762)
岡田 篤真 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90086174)
竹中 博士 九州大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30253397)
釜江 克宏 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (50161196)
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研究概要 |
都市圏が活断層に囲まれた平野または盆地に発達した日本においては,どの主要都市も直下に震源となりうる活断層の危険度評価とそれに基づく定量的な強震動予測を行う必要がある.1995年兵庫県南部地震を引き起こした六甲断層系も活断層と知られていたが、活動度はBとされ、特に地震危険度が高い断層とは考えられてはいなかった。この問題は本研究進める上での重要なモチベーションの1つとなっている。本研究は地形地質学,地震学,地震工学の各分野の研究者が一同に連携し,活断層の調査手法の確立とその危険度評価,震源となる断層からの地震動の発生メカニズム,地下構造・表層地質構造の地震動への影響評価、等について、理論的,観測的研究を行うとともに,理論的・半経験的手法による高精度強震動予測手法の開発し、近い将来必ずやってくる大地震の被害軽減に役立つ情報を発信することを目的とした.主な研究内容は、(1)活断層の危険度評価、(2)震源の物理に基づく断層モデル、(3)強震動評価のための地下構造のモデル化とサイト特性評価,(4)不均質媒質における波動場伝播,(5)広帯域強震動観測と強震動特性、(6)高精度強震動予測手法の開発と確立、の6項目に渡り広範な研究を通して地震像を解明し、将来の大地震の災害の軽減に生きる研究成果を目指した.(1)活断層の危険度評価に関して、四国の中央構造線活断層系の一部でトレンチ掘削を含む活断層調査、北日本の活断層系を例に、逆断層型活断層の深部形状を明らかにするための反射法地震探査、都市直下の活断層の調査のための新しい方法として地層抜き取り装置(Geoslicer)の開発などを行った.断層系の活動履歴や平均変位速度などに基づき活断層の長期評価の方法論検討、さらに、活断層の分布形態に基づく断層破壊開始点と破壊伝播方向の推定法,横ずれ活断層の断層線に沿った縦ずれ変位分布に基づく断層セグメント区分の研究を行い、活断層調査を基に地震の震源のモデル化の方法を系統的にまとめた。(2)震源の物理に基づく断層モデルについて、断層帯内の小亀裂間の動的相互作用を考慮した地震破壊のダイナミクスの数値シミュレーションにより地震破壊の動的核形成から成長の停止までのプロセスを定量的に解明した.動的成長する亀裂の先端がそのダイナミクスによりわずかに屈曲することにより容易に停止すること、また破壊の動的成長は周辺媒質の破砕度が高いと成長がより抑制されることを明らかにした。強震動シミュレーションに必要な断層面でのすべり速度時間関数について断層形成の動的過程を考慮した近似式を導き、その有効性を示した。強震動記録のエンベロップを用いた震源過程のインバージョンを行い震源断層でのアスペリティーと高周波地震動生成の関係を明らかにした。(3)強震動評価のための地下構造のモデル化とサイト特性評価に関して、屈折法データと重力データの同時インバージョンによる地下構造の決定精度を高め、(4)不均質媒質における波動場伝播の研究と結合して、堆積平野の地下構造と強震動特性の関係の研究を行った。(5)広帯域強震動観測と強震動特性に関して、広帯域の強震動観測結果に基づいて1995年兵庫県南部地震時の震源域の強震動を詳細に再現する研究、および安政江戸地震の震源域に発生する小地震記録を用いて強震動の計算を行い当時の地震被害記録を比較することにより、震源域の推定と強震動再現評価の研究を行った。1994年北海道東方沖地震(M8.1)のようなスラブ内地震に付いて震源特性と強震動の関係の研究を行なった。 これらの研究を総合化して(6)高精度強震動予測手法の開発と確立の研究を行い、強震動予測のためのレシビとしてまとめた。強震動予測のために必要な震源断層は、活断層調査や震源の動力学的モデルに基づき、巨視的震源パラメータと微視的震源パラメータにより不均質震源としてモデル化される。モデル化手法の有効性は1994年ノースリッジ地震、1995年兵庫南部地震、さらに1999コジャエリ地震や1999集集地震の強震動記録によって検証された。
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