阪神地区は南北に海と山が迫り東西に細長い交通のボトルネックにあたる。このような地理条件のところを襲った今次震災において、すべての活動を陸上に依存し過ぎると緊急の対応に窮することになることが露呈された。特に今回の地震では、道路の閉塞は同時にすべての緊急活動をマヒさせてしまうことを我々は学ぶことになった。このような緊急活動の停滞に対し、即座に代替できるのは船舶が有する自己完結機能と海上輸送機能ならびに通信機能である。阪神間のように長い海岸線をもつ沿岸域に位置する地域においては、今後の危機管理には船舶であればこその機能を有効に利用する発想が重要であるが、現実に、今回の震災では神戸港が被災したなか応急処置を施したバースを利用して、船舶は生活機能を提供し、また、人の移動や物質の輸送等を通じて、途絶した陸上交通に代わって海上交通が重要な役割を担った。この研究では、被災した神戸港の状況とそのとき海上で何が起こっていたか、そして、神戸港の復旧復興状況と海上交通の支援状況を、海の視点から、その実情を把握分析するとともに、船だからこそ力が発揮できる災害に対する緊急支援機能が、今回の震災に対しどのようにその役割を果たし得たかを検証した。さらに、そこから得られた教訓をもとに、神戸のような港湾都市における防災機構と危機管理体制に、船舶をどのように組み込み活用すべきか、また、このような大規模災害対策に船舶が存分に貢献できるために、港湾施設がどのように整備されるべきかについてその方向性を示し得た。そして、港湾都市における今後の防災体制のあり方に対する指針として、船舶を活用した海上危機管理システムを構築提案した。
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