本研究は、当研究室で発見されたカビ脱窒系の構成成分である金属タンパク質について、構造、機能、電子伝達系との相互作用などを明かにし、ミトコンドリア嫌気呼吸系におけるエネルギー産生機構を解明することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。 1.Fusarium oxysporumの硝酸塩還元酵素は細菌の酵素同様、膜タンパクであり、完全精製が困難であったが、本酵素を可溶化し、ほぼ均一にまで精製することができた。今後は部分アミノ産配列を決定し、PCR法などを用いて遺伝子の取得を目指す。 2.亜硝酸塩還元酵素およびアズリンの部分アミノ産配列をさらに多く決定し、遺伝子の取得を試みているが、未だ成功していない。 3.P450norのX線結晶解析に成功し、このユニークなP450の立体構造が明かとなった。全体的な高次構造は他のモノオキシゲナーゼP450によく似ていたが、ヘム遠位側に大きなオープンスペースが形成されていた。このスペースはNADH結合部位であると予想した。また、CylindrocarpontonkinenseのP450nor2とのキメラタンパクの特異性から、アミノ末端側にNADH結合部位の存在することを予想した。そしてB'ヘリックス中にNADH結合モチーフによく似た配列を見いだし、その中のGをVに変えた変異体の酵素活性が大きく減少することを確認した。このNADH/NADPH特異性決定部位について今後さらに検討する。
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