研究概要 |
カテコール環を開裂する二原子酸素添加酵素は,intradiol型とextradiol型とに分類される.前者は補因子として非ヘムFe^<3+>を含み,各種分光法の適用が容易であるが,extradiol型酵素は補因子が非ヘムFe^<2+>であり,可視部に吸収がなく,ESRも示さず,分子論的研究が遅れている. カテコール2,3-ジオキシゲナーゼはextradiol型の酵素で,我々はPseudomonas putida mt-2由来の本酵素遺伝子を大腸菌で大量発現させ,初めて完全なホロ酵素を得た.拮抗阻害剤であるο-ニトロフェノールとの複合体の結晶は,アセトンを安定化剤とした場合の針状とは異なり,板状であった.ο-ニトロフェノールはホロ酵素にサブユニット当たり1:1で強く結合した.その吸収スペクトルはアニオン型であり,さらに長波長領域に幅広い吸収帯が出現した.複合体の共鳴ラマンで,ニトロ基の対称伸縮振動による1334cm^<-1>のピークが1328cm^<-1>へ低波数シフトした.近赤外の900nmの吸収はニトロフェノールの結合で変化しなかった.以上から,ニトロフェノールアニオンは活性部位のFe^<2+>と電荷移動錯体を形成し,その結果,電子の局在性が高まるが,d_x^2-_y^2オ-ビタルは安定なままであることが示され,extradiol型酵素ではカテコールのLUMOの重要性が示唆された. 一方,ドーパミンβ-モノオキシゲナーゼは銅依存性の一原子酸素添加酵素(4量体)であるが,低濃度DTTでサブユニット間S-S結合のみを選択的に切断できること,その際活性や4次構造には変化がないことを示した.さらにウシ副腎1個からの迅速酵素精製法を開発し,天然の変異酵素(遺伝子の多様性)を見いだした.
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