研究概要 |
Rhodococcussp.N-771由来のニトリルヒドラターゼ(NHase)は非ヘム鉄を含む酵素で,ニトリルからアミドを合成する.本酵素は、菌体を暗条件に置くと酵素に一酸化窒素(NO)が結合して不活性化され、光を照射するとNOが解離して活性化する.光応答の詳細な機構を解明するため、本年度はR.sp.N-771のNO合成酵素の探索,プロテアーゼ消化による光応答部位の解析に加え,不活性型酵素のX線結晶構造解析を行った. 1.R.sp.N-771のNO合成酵素の探索 NO合成系の基質を同定するため,NO捕捉剤を用いて培地中における生菌体のNO合成活性を測定したところ、NO合成はL-アルギニンでは促進されず、亜硝酸イオンの添加によって促進された。この結果は,R.sp.N-771におけるNO合成は亜硝酸還元酵素によって行われている可能性を示唆している. 2.光応答部位の解析 不活性型酵素から単離したαサブユニットをトリプシン消化した後、逆相クロマトグラフィーを行い、鉄とNOが結合した状態でN_<105>〜K_<128>の24残基のペプチドを単離することに成功した.この領域は種々のNHase間で極めてよく保存されており、金属結合部位と思われる^<109>C-S-L-C-S-^<114>CのCysクラスターを含んでいた.さらにこの断片の質量分析、アミノ酸組成分析を行い、^<112>Cysの側鎖が特異的に酸化され、スルフィン酸となっていることを明らかにした. 3.不活性型酵素のX線結晶構造解析 硫安を沈殿剤とし、少量のジオキサンを加えた系でミクロシ-ディング法を行い、良質な菱形板状結晶を得ることに成功した.この結晶では、2.0Å分解能で良質なX線回折強度データ(R因子5.5%)を収集できた.さらにパタ-ソン関数を明瞭に説明でき、且つNHase上の結合位置が異なる3種類の重原子同型置換体の調製に成功し、それらを基にして、位相計算、溶媒平滑化を行い、初期電子密度図を得た.現在、分子模型の構築を行っている.
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