研究概要 |
近年DNA構造として二重らせん構造以外の三重鎖DNA,四重鎖DNAなどの多重鎖DNA構造が注目されている。三重鎖DNAはホモプリン・ホモピリミジン二重鎖(pur・pyr)の主溝に沿ってホモピリミジン単鎖およびホモプリン単鎖がHoogsteen型の水素結合をすることにより形成され、構造維持のためにはMg^<2+>イオンが必要である。pur・pyr配列は真核生物のゲノム中に広く分布しており、遺伝子発現の調節領域や組み換えのホットスポットに位置することから、三重鎖DNAが遺伝子発現調節や組み換えに関与すると考えられている。これまで三重鎖DNA構造に結合する蛋白質は全く知られていなかったが、ヒト癌遺伝子c-mycのプロモーター近傍のpur・pyr配列が分子内で形成する三重鎖DNA構造に結合し、c-mycの発現を制御する三重鎖DNA結合蛋白質MAZは我々は単離した。またアミノ酸配列よりこの蛋白質がCys2His2型の5個のZn finger motifを有することを明らかにした。今年度、この5個のZn finger motifのうちN末端に位置する3個が三重鎖DNAに結合するのに必要な最小領域であることを確立した。またこの三重鎖DNAに結合するのに必要な最小領域の遺伝子をpETベクターにクローニングし、大腸菌内での大量発現系を樹立した。大量発現した大腸菌を破砕した分画を、ヘパリンSepharoseCL-6Bカラム、逆相HPLCカラムに通すことにより、MAZを単品にまで精製することに成功した。精製したMAZを円偏光二色性(CD)で測定し、αヘリックスやβシート構造を有することを見い出した。またMAZが二重鎖DNAよりも単重鎖DNAや三重鎖DNAにより強く結合することも見い出した。現在NMRを駆使してMAZの詳細な高次構造を解析すると共に、ゲルシフト法でMAZの結合特異性を解析している。
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