1.TFIIEによるTFIIH制御機能の研究:TFIIEの機能として我々は、TFIIHの有するキナーゼとATPアーゼの2つの活性の促進を示している。一方、最近TFIIEがもう一つの機能として、転写開始の際の2本鎖を1本鎖にするプロモーター・メルティングの段階で作用することも報告された。我々は、TFIIEの57kDaサブユニットTFIIEαの解析を行う目的で、N末、C末から削った変異体及び内部を欠失した変異体を作成し、大腸菌にて発現、精製を行ったところ、N末側約170アミノ酸残基が転写活性において必須であること、C末側ではC末端近傍の377番から393番目の酸性アミノ酸に富む領域にTFIIHが結合し、転写、TFIIHのキナーゼ活性促進に重要なことを明らかにした。以上より、TFIIEαがTFIIHの活性制御にて重要な役割を果たすことが更に裏付けられたと考えられる。 2.TFIIEβの機能-活性解析:上記の様にTFIIEには、TFIIHの活性制御以外に転写が開始される際に機能する可能性が新たに考えられている。この可能性を検討するため、TFIIEの34kDaサブユニットTFIIEβの解析を行った。TFIIEαと同様にN末端、C末端から削った変異体及び内部を欠失させた変異体を作成し、検討した。その結果、N末の50アミノ酸までを削っても転写活性は影響を受けず、C末から13個削るとまだ活性は見られるが野生株の10%以下となった。次にTFIIEβがいかなる基本転写因子と結合するかを調べたところ、TFIIBとTFIIFβと強く結合することが明らかとなったので、TFIIEβ内のこれら因子の結合領域を解析した。その結果、両者は共にC末端近傍の塩基性領域(アミノ酸257番-277番目)に結合した。転写開始複合体のDNA上への架橋実験、Pol IIとTFIIEとの2次元結晶解析から、プロモーター上の転写開始点上流-14から-2というプロモーター・メルティングがまさに起こる領域へTFIIEβが結合することが調べられたが、上記の結果を総合すると-14付近でC末端を上流側に向けてTFIIB、TFIIFβと結合すると考えられる。
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