1。オルファン核内レセプターRORαの神経細胞特異的な転写の制御機構明らかにする目的で、P19細胞を用いたトランスフェクション実験で転写制御領域および制御因子の解析を行った。その結果、RORα遺伝子の上流に局在するKrox/Egr因子結合配列に分化特異的なタンパクが、また下流GC-box配列にSP1因子が結合し、それらの相互作用を通して、P19細胞の神経細胞分化特異的な転写の制御が規定されていることが明らかにされた(投稿準備中)。RORα遺伝子の転写制御因子の一つが神経細胞の発生や分化に密接に関わるKrox/Egrファミリーのメンバーであると示唆され、今後この制御因子のcDNAを単離し、プルキンエ細胞でのRORα遺伝子の転写制御に関与しているかを解析する予定である。 2。一方、RORαがどのような遺伝子の転写制御を通して小脳プルキンエ細胞の生後発達に関与しているかを明らかにする目的で、RORαの標的遺伝子を同定し、その転写制御をトランスフェクション実験系で解析した。その結果、プルキンエ細胞特異的な遺伝子Pcp-2の転写がRORαの標的遺伝子であることが示唆された。さらに興味あることに、Pcp-2遺伝子のみならず他のプロモーターもRORαとRARとの相互作用により相乗的に活性化された。この結果は、RORαがレチノイン酸シグナル伝達経路に新しいmodulatorとして機能することを示唆している(投稿中)。今後、これら二つのレセプターのcross-talkによる転写制御の分子機序を明らかにしていきたい。
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