1.Msx3ノックアウトマウスの作成 約13kbのMsx3のゲノム遺伝子フラグメントを用いてtargeting vectorを作成した。当初、ホメオボックスを有するexon2を含む3kbのフラグメントを除いたtargeting vectorを用い、G418とGANCによるpositive-negative selectionを行ったが、homologous recombinantは得られなかった。そこで、ホメオボックスを含む1.8kbのフラグメントを除いたtargeting vectorに作成し直したところ、個数のhomologous recombinantsが得られた。これらのhomologous recombinantsをBALB/cおよびC57BL/6マウスのblastocystにmicroinjectionし、キメラマウスを作成した。現在、成体に成長するのを待っているところで、今後、germline transmissionしたキメラマウスを野生型マウスと交配することにより、ヘテロ接合体およびホモ接合体を得る予定である。 2.Msx2とアポトーシス Msx2ノックアウトマウスでは、歯上皮の発生異常が生じた。TUNEL法を用いて歯の発生過程でのアポトーシスを調べたところ、Msx2ノックアウトマウスでは、野生型で認められる歯上皮でのアポトーシスが全く認められなかった。アポトーシス関連遺伝子のBcl-2、Bcl-x、p53の歯上皮での発現を調べたところ、Bcl-2およびBcl-xの発現が著明に増強していたが、p53の発現は野生型と差が認められなかった。Msx1・Msx2ダブルノックアウトマウスでは肢芽の指間組織のアポトーシスも抑制されていた。Msx2は、Bcl-2およびBcl-xの発現を抑制することによりアポトーシスを誘導する機能を有することが推測された。現在、in vitroの実験系での証明を試みている。 3.無脳症(神経管閉鎖不全)、心奇形、唇・口蓋裂、四肢の奇形の分子機構の解明 研究計画調書に記載した実験計画にしたがって、関連遺伝子の発現をMsx1およびMsx2のノックアウトマウス組織で調べているが、実験途中にあり、現在のところ一定の結論は得られていない。 4.Msx1、Msx2、Hoxa10の下流遺伝子のクローニング それぞれのノックアウトマウス組織を用いたdifferential display法により、ノックアウトマウス組織で発現量が減少あるいは増加する遺伝子をいくつか得ることができた。ほとんどが新規の遺伝子であるため、遺伝子ライブラリーのスクリーニングおよびin situ hybridizationによる解析を進めているところである。
|