研究概要 |
Axi(auxin independent growth)159遺伝子は,細胞中で過剰に発現させることにより,その細胞にオーキシン非要求生(オーキシン非存在下でもプロトプラストが細胞分裂できる)を付与することができる。現在まで,Axi遺伝子と相同性を示す遺伝子が,タバコ以外にもシロイヌナズナ,イネ,ダイズにも存在することを明らかにしたが,それ以外の遺伝子との相同性は低く,遺伝子配列よりその機能を推定するには至っていない。本年度は、より厳密な実験系の確立と発現量が少ないAxil159mRNAの検出法を確立した。 様々な濃度の植物ホルモンを含む柔らかい寒天上に注意深くタバコ苗(SR1)を植え付け、経時的に植物体をサンプリングし、そのAxi159の発現レベルの変化をRT-PCRで調べた。処理後一日目においては、サイトカイニン(BAP)0.1μM添加区で顕著な発現誘導が認められた。BAP0.3μMおよび1.0μM添加区では0.1μM添加区に比べ、発現レベルは低下した。この時点ではオーキシン(NAA;0.1^〜10μM)による誘導は認められなかった。処理後三日目、五日目、七日目においては、特にNAA(0.1μM)添加によるAxi159遺伝子の発現誘導が顕著に観察された。このようにAxi159の発現は、低濃度のオーキシンやサイトカイニンにより発現が誘導された。また、Axl159が35Sプロモーターに含まれるエンハンサーによって過剰発現している変異株CF15-9では、NAA添加(1μM)では、Axi1の発現は変化しなかったが、BAP添加(1μM)では、むしろ発現が抑えられていた。エンハンサーは遺伝子下流に挿入されておりAxi1のプロモーター構造は変化していないのにもかかわらず、Axi1の発現様式は、親株であるSR1とは大きく異なっていた。
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