研究課題/領域番号 |
08255103
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
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研究分担者 |
山下 信義 資源環境総合研究所, 水圏環境保全部, 通産技官
加藤 義久 東海大学, 海洋学部, 助教授 (00152752)
柳 哲雄 愛媛大学, 工学部, 教授 (70036490)
高田 秀重 東京農工大学, 農学部, 助手 (70187970)
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キーワード | ポリ塩化ビフェニル / PCB / 堆積物 / 東京湾 / ムラサキイガイ / アルキルベンゼン / 再移動 |
研究概要 |
本研究の目的は、東京湾の魚介類および堆積物中のPCBの分布を明らかにし、PCBの供給源を予想することである。本年度の研究から以下のことが明らかになった。ムラサキイガイ中のPCB濃度は横浜から江戸川河口にかけての湾奥部で相対的に濃度が高く、湾奥部にPCBの供給源があることが示唆された。表層堆積物中のPCB濃度も湾奥、特に京浜運河、東京港内で高濃度であった。これらの堆積物の分析結果も湾奥部にPCBの供給源があることを示唆している。新たな供給と過去(PCBの使用禁止以前)に供給されたものを区別するために、分枝型アルキルベンゼンをこれらの堆積物試料についてPCBと同時に分析した。分枝型アルキルベンゼンは過去(1958年から1970年まで)に合成洗剤の原料として使われ洗剤の使用に伴い水環境へ放出されており、その使用年代はPCBの使用年代と類似している。またその物理化学的性質もPCBと類似していおり、過去に供給され堆積したPCBの指標として用いることが出来ると考えられている。堆積物中のPCBsと分枝型アルキルベンゼンの分布は全体として類似していた。すなわち、PCBが高濃度の地点の大部分では分岐型アルキルベンゼンも高濃度であった。このことから東京湾沿岸で検出されたPCBの大部分は過去に堆積したものが水平方向、鉛直方向の再移動を繰り返して堆積物の表層に残留しているものと推察された。ただし、いくつかの地点では分岐型アルキルベンゼン濃度が低いにも関わらず高濃度のPCBが検出され、これらの地点では新たなPCBの流入があったものと推定される。来年度は堆積物の撹乱、再移動過程を組み込んだモデルを構築し、今後数十年のPCBの濃度の推移を予測したい。さらに、これらの湾岸の運河、港湾、河口の堆積物の浄化策(浚渫等)を講じた場合、PCB濃度の低減にどの程度の効果があるのかを予測し、効果的な低減策を提言したい。
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