研究概要 |
本研究は阪神大震災における火災および廃材の野焼き処理による高毒性ダイオキシン類の発生実態を明らかにし、また、それに伴う環境汚染を究明することを目的として行った。本研究成果は以下の通りである。 (1)天然材に比べて倒壊家屋廃材は、野焼き処理により極めて多量のダイオキシン類の生成することが判明した。焼却灰に残存する量だけでも天然材の12〜230倍にもなる。西宮、尼崎および宝塚の3都市では約24万トンの廃材が野焼き処理され、焼却灰は約7万9千トンになる。焼却灰中に生成したダイオキシン類量は2,3,7,8-四塩化ダイオキシン毒性等価量(TEQ)で70.7gTEQとなる。大気中への放出量を加味した場合、生成量は約数百gTEQと推定された。 (2)対照地点の土壌試料中のダイオキシン類濃度(3.23pgTEQ/g)と比較して、火災現場の試料は82〜7060倍も高い。特に、電気商店の火災現場(22800pgTEQ/g)では極めて大量のダイオキシン類が生成していた。電気製品の電線や配線などに含まれる金属類がダイオキシン類の生成を促進したものと推測される。ケミカルシューズ工場の試料(1580pgTEQ/g)は一般民家のものよりも高濃度であった。民家の場合(130pgTEQ/g)よりもプラスチック類などの化学製品が多く燃焼したことに起因すると考えられる。 (3)野焼きや火災現場の試料ではPCDFsが極めて高い比率で存在する。廃材の野焼きの場合、高濃度を示す西宮市や尼崎市の試料ではPCDFsがTEQ濃度の大半を占める。このような現象はダイオキシン類が大量に生成していた電気商店の場合にも認められる。従って、PCDFsが大量に生成する起源物質を究明することが今後の重要な課題になる。 (4)西宮市と尼崎市では野焼き処理後、1995年6月から1996年10月頃まで簡易焼却炉で廃材が焼却された。黒松の針葉を指標試料とした大気汚染評価においては、両地点ともに2〜3kmの範囲が焼却に伴う汚染を受けていることが判明した。
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