前年度までに確立したM13ファージのlacZ遺伝子部分にミスマッチを持つヘテロデュープレックスDNAを基質として用い細胞抽出液のミスマッチ修復能(MMR)を測定する系を利用してアルキル化剤耐性を示すHcLa由来細胞3種のMMR活性を測定した。その結果、3種の細胞ともMMR活性の有意な低下を示し、アルキル化剤耐性にMMR欠損を伴っていることが明らかになった。さらにマイクロサテライト繰り返し配列も正常細胞に比べて高い変異性を示した。これまでの所MMRに関与するヒト遺伝子が5個同定されているが、それらのどの遺伝子に欠損があるか明らかにするために各々の遺伝子のコードする蛋白に対する抗体を用いてウェスタン法で解析した。1種の細胞はhMSH2蛋白に異常を示したが他の2種は全て正常であった。また、遺伝子欠損の同定されているMMR欠損細胞抽出液との相補性試験の結果も後者の2種は全ての細胞と相補性を示した。この結果はこれらの細胞ではまだ同定されていないMMR関連遺伝子に欠損が生じている可能性を示唆しており、現在その同定を進めている。 環境変異源によって遺伝子変異が誘発されたことが明らかにされている食道がん由来の細胞株21種についてもMMRを同様に測定した。そのうち3種の細胞は非常に低いMMR活性を示した。これらの細胞についても各遺伝子産物の異常をウェスタン法で解析したところhMSH6、hPMS2蛋白にそれぞれ異常が見られたので現在遺伝子の塩基配列の解析を進めている。
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