研究概要 |
発表課題:運動ニューロン疾患と電離放射線 運動ニューロン疾患(MND)が太平洋での原爆実験に影響されたとする論文(Neilsons et al. J Neurol Sci 134 : 61-66, 1995)が出て、英国で大きく扱われたため、つぎの報告を行った。 1)MNDなど、神経変性疾患には古くから体細胞突然変異説がある. 2)日本のMNDの訂正死亡率の年次推移はそのような考察の余地がある. しかし、1)は実験、2)はマクロのレベルの情報で、1)2)ともMND患者が放射線照射と相関していることの結果であり、その事実を確かめないで直ちにNeilsonら(1995)のような考察はできない. この点を分析した報告は著者による3報があり、すべて否定的である。 a.ケース・コントロール研究A(Kondo and Tsubaki, 1981)原爆被曝歴と相関がない b.同B(厚生省ALS班,1975)放射線へ職業被曝と相関がない c.原爆被曝者の死因調査の結果は、被曝しなかった対照と差がない(近藤 未発表) 元来、MND患者には放射線被曝歴のない事例の方がはるかに多く、たとえよわい相関があったとしても、MNDの原因ではなく、高々誘因、または副因でしかなく、a〜cからみて、MNDと放射線との関連性は考慮に値しない、と考えられる。
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