パーキンソン病の類縁疾患である汎発性Lewy小体病大脳皮質からショ精密度勾配遠心、セルソーターを併用してLewy小体を精製し、精製Lewy小体をマウスに免疫し、モノクローナル抗体を得た。Lewy小体を陽性に染色するクローンを選択し、認識する抗原の生化学的同定を試みた。Lewy小体を陽性に染色する数種のモノクローン抗体が得られた。ほぼ全てのLewy小体を強く染色すると同時に、一部の正常神経突起を染色するクローンLB48は、ニューロフィラメントMサブユニットと反応すると同時に、βチューブリンと交叉反応を示した。LB48に比してLewy小体をやや弱く染色するクローンLB202およびLB204は、ニューロフィラメントMサブユニットと反応した。Lewy小体は、微細形態的に、径10nmの線維構造が基本骨格をなすこと、またニューロフィラメントに対する抗体で陽性に染色される場合があることから、ニューロフィラメントが基本構成成分であるものとする考え方が根強かった。しかし、通常の抗ニューロフィラメント抗体が染色するLewy小体は、ことに皮質型Lewy小体については高々5%程度に過ぎないこと、またLewy小体は通常のニューロフィラメントを可溶化するSDSにも不溶であることなどから、正常なニューロフィラメントがそのままの形でLewy小体に組み込まれているとは考えにくい。今回得られたニューロフィラメントMサブユニットと交叉反応する3クローンのうちLewy小体を最も強く認識したLB48は、チューブリンとも交叉反応を示したが、今後LB48がLewy小体内のどのような構成成分と反応しているのか、またニューロフィラメント蛋白上の認識部位、特異的な修飾に対する反応の有無などを詳細に検討することにより、Lewy小体の構成線維の特質がさらに明らかになることが期待される。
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