研究概要 |
ロイシンリッチリピート構造を有する蛋白はショウジョウバエ神経系の発声過程で多くのインベントに関与していることが知られているが、哺乳類ではほとんど同定されていない。我々はexpressed sequence tagクローンの中にロイシンリッチリピート構造を有するものが存在することに着目し2種類のESTクローンを基にマウスcDNAライブラリースクリーニングを行い、3種類のロイシンリッチリピート蛋白(NLRR-1,-2,-3)を同定した。このうちNLRR-1,-3については全長cDNAを単離しコードする蛋白を推定したところどちらも細胞膜を一回貫通し細胞外にLRR構造を有する事が判明した。これら3種類の遺伝子発現はどれも神経系を中心に発現しているもののお互いに発現パターンを異にしていること、及び成熟神経系では海馬、小脳というような可塑性に富んだ領域に強く発現することから可塑性形成に何らかの役割を担っていることが示唆された。またNLRR-3は機械的損傷を加えられた大脳皮質で有意に発現上昇していることから損傷修復にも機能していることが考えられた。これら3種の蛋白とは別に胚性癌細胞株P19の神経分化の際に発現上昇する遺伝子として我々が同定したクローンGA3-43は構造解析の結果膜を一回貫通する蛋白で細胞外領域にLRR構造とイムノグリブリン様ドメインを合わせ持つことが明らかとなりLRRとIgGドメインを合わせ持つことからLIG-1と名付け、組織における発現解析をしたところ先の3種とは異なり主にグリア細胞で発現していた。特に小脳ではバーグマングリアに発現しておりこの蛋白がプルキエンエ細胞の樹状突起とバーグマングリアの間の細胞接着等の現象を制御することにより長期抑制などの可塑性に対して影響を与えていることが考えられた。今後は各LRR蛋白の抗体を作成し蛋白レベルでの発現局在を検討していく予定である。
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