本研究はハンチントン遺伝子のCAGリピート増幅とハンチンチン病(HD)発症の関係に注目し、CAGリピートが増幅するとなぜ選択的神経細胞死がおこるか解明するためにモデル動物を作製することを最初の目的としている。ハンチンチン病患者より得られた82リピートのCAGを持つハンチントン遺伝子のエクソン1をマウス遺伝子のエクソン1と入れ替えたES細胞導入用構造遺伝子を作成した。マウスの遺伝子はエクソン1より上流約6Kbとその下流約2.5Kbを含んでおり、エクソン1の下流にloxP塩基配列で挟まれたneo発現遺伝子をハンチンチン遺伝子と反対の向きに導入した。ネガティブセレクションマーカーとしてジフテリアトキシンA発現ベクター(pMC1/DTA)を両端に組み入れ、全構造遺伝子をλFixII phage DNAのNot I siteに結合した。構造遺伝子作成の過程でCAGリピートが27のplasmidDNAおよびCAGリピートが113に伸長したphageDNAをも得ることがきた。 エレクトロポーレーションによってCAGリピート82を持つ遺伝子をES細胞に導入した。G418選択培地中で育成する312個のES細胞のゲノムDNAを検討した結果、18個の正しいホモロガスリコンビネイションを起こしたクローンを得た。その結果50%にあたる9クローンにCAGリピート82を持つES細胞を得た。その他6クローンは正常域であるCAGリピート約25に短くなっていた。さらに、2クローンはCAGリピート約45から約70程度に減少した。残りの1クローンは逆に伸長しておりそのCAGリピート数は約120であった。これらのクローンを用いてキメラマウスを作製したところ雄21匹、雌12匹の合計33匹を得た。現在、これらのマウスを交配によりヘテロマウスを作製している。
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