ハロバクテリアにおいて放射性メバロン酸由来の脂質修飾タンパク質を見いだし、その構造解析からそれらが古細菌特有のジフィタニルグリセリル化タンパク質であることを明らかにしてきた。この研究を進展させるために行った今年度の成果を以下に示す。 ◎ジフィタニルグリセリル化タンパク質のタンパク質部分の特定をするために、種々のカラム条件を検討しこれらのタンパク質の精製を試みた。ブチルトヨパールでの疎水クロマトグラフィによって吸着する放射性タンパク質は、オクチルグルコシドによる段階的濃度勾配法により溶出した。その後DEAEイオン交換クロマトグラフィでの食塩による濃度勾配法をもちいて放射性タンパク質を分離精製した。三種の主な放射性タンパク質が分離されたが、これらの画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動解析から21kDaに相当するタンパク質は単一であることがわかり、現在そのタンパク質の構造解析をしている。 ◎メバロン酸由来のジフィタニルグリセリル化タンパク質を主な脂質タンパク質として持つハロバクテリアにおいて、放射性のゲラニオール、ファルネソ-ル、そしてゲラニルゲラニオールのとりこみ研究もおこなった。その化合物もSDSポリアクリルアミド電気泳動解析から、タンパク質へ取り込まれることが確認された。特にゲラニオールに関して更に詳細に検討し、放射性ゲラニオールはハロバクテリア特有の糖結合ドリコール化合物群へ取り込まれることも見いだされた。またゲラニオールは、低濃度で同細菌の成長を止め、高濃度では容易に溶菌作用を示した。培養外液のゲラニオールは菌体の中に取り込まれ酸化されゲラニル酸として菌体外に放出されることも示された。 今後、ジフィタニルグリセリル化タンパク質生合成系の解明を中心にゲラニオールによるハロバクテリアの成長阻害との関係も追求していく予定である。
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