研究概要 |
[目的]我々はRLGS法を、常染色体性劣性遺伝形式で発症する心筋症ハムスターに応用することにより、原因遺伝子座位を同定し最終的に原因遺伝子を同定することを目的として研究を進めてきた。[結果]RLGS法を用いて、531個のDNAマーカーよりなる、シリアンハムスターの全染色体地図を作成した。心筋症と連鎖するマーカーをクローニングし、FISH法により原因遺伝子座位をChr.9qa2.1-b1にマップした。過去にヒトで報告されていた肥大型心筋症の原因遺伝子である、β-myosin heavy chain,cardiac troponin T, α-tropomyosin,β-myosin binding protein Cは、FISH法によりChr.9qa2.1-b1以外の領域にマップされ、本疾患の原因遺伝子ではないことを証明した。最終的に筋肉の構造蛋白の一つであるδ-sarcoglycanが本疾患の原因遺伝子であることをFISH法および、連鎖解析により決定した。心筋症ハムスターでは、δ-sarcoglycanの発現がなく、蛋白も存在しないことを証明した。[考察]RLGS法を、遺伝的地図の存在しないシリアンハムスターに応用し、全染色体地図を作成し、最終的に原因遺伝子を同定した。δ-sarcoglycanは、LGMD-F (Limb-girdle muscular dystrophy type F)の原因遺伝子であることが報告されている。心筋症ハムスターは、dystrophin-associated glycoprotein complexの異常からなる唯一の疾患モデル動物であり、今後も病態解析および遺伝子治療を考える上で重要な位置をしめるものと考えられる。[結論]RLGS法を用いてシリアンハムスターの全染色体地図を作り上げ、最終的に原因遺伝子を同定した。
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