10塩基からなるCArG box (CC(A+T)_6GGの配列)はその存在状況から、筋肉系特異的発現する一群の遺伝子を同調的に発現させる転写調節機構の一部を担っていると考えられる。CArG boxが心筋細胞を含む筋肉系細胞の個体発生及び組織特異的に遺伝子の転写調節においてどの様な役割を演じているのかを明らかにするために研究を進めている。CArG boxに結合する核内蛋白質としてはSRFがすでに報告されているが、この蛋白質は血清で遺伝子発現誘導される遺伝子群の発現調節に寄与していると考えられており、筋肉系特異的発現における関与の検討が十分に進んでいない。 私たちはCArG boxとSRFのシステムの個体の発生分化において働きをより直接的に証明するために、SRF遺伝子を遺伝子組換えでノックアウトした細胞を作製し、試験管内での心筋分化における影響を調べるとともに、SRFノックアウトマウス個体の作製を進めている。また、マウスのSRF遺伝子の解析から、SRF遺伝子は7エキソンから構成されており、mRNAにおいては選択的スプライシングによりエキソン5が抜け落ちている物がみられることが分かった。エキソン5には他の転写活性因子との相互作用ドメインが存在すると報告されており、これら2種類のSRFの転写調節における役割分担があると考えられる。実際、心臓や血管などの筋肉系臓器や培養筋細胞の分化時に短いタイプのmRNA量が増加し、このエキソン5が抜け落ちているSRF産物はCArG boxを含む遺伝子の転写を活性化できないという実験結果を得ている。
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