研究概要 |
本研究は遺伝子の転写過程における分子認識の実体をイメージングにより明らかにすることを目的としている。これまで遺伝子と転写調節因子との結合はゲルシフトなどで予測していたため、結合過程でいかなる形態変化(ドメイン間の)が起こるかは不明であった。本研究の推進により遺伝子の転写や組み変えといった生命の重要現象が一部ではあるが動的形態変化として捉えられるようになった。本年度は次の二点について研究を行った。(1)CREBとソマトスタチン遺伝子プロモーター領域との結合を三次元的に明らかにした。すなわち、CREBは二量体として機能するが、ロイシンジッパー部分を向き合うように二量体が形成される。これら二量体によって形成されるクレバスの間にDNAを挟み転写因子としての機能を果たすことになる。しかし、多くの観察結果から、ただ挟むだけでなく、捻っていることが考察される。DNAに捻りと屈曲を与えることにより転写開始を増強していることが形態的に予測された。(2)大腸菌のDNAとポリメラーゼの結合を明らかにした。ポリメラーゼは生化学的にβ,β',α,α,σの四つのサブユニットからなることが生化学的に明かとなっている。分子量の違いを基準としてa,b割り当てると二つのαサブユニットの上にβとβ'のサブユニットが向かい合って被さった構造となることが明かとなった。この際β.β'とα,αとの間には大きなチャンネルが形成される。そしてこのチャンネルにDNAが挟まれることが形態的に示された。一方σ因子の構造は明らかにできなかったが、σ因子がDNAプロモーター部を認識する機能があること、およびこの因子を外したコア酵素の構造との比較から、α,β間に存在する大きなチャンネルにDNAと共に存在するものと思われる。
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