造血調節因子依存性にアポトーシスを制御する転写調節因子の単離を試みた。 プローブとして用いたのは、HLF/PAR結合配列(TTACGTAA)で、17;19転座型白血病の転座切断点よりわれわれが単離したE2A-HLF融合転写調節因子が、IL-3依存性細胞のアポトーシスを抑制する実験結果に基づいている。 二つの候補因子が同定され、一方(E4BP4)は詳細な検討を終えて結果を公表した。もう一方は現在なお詳細を検討中である。 E4BP4は1992年に英国のグループによって単離されたロイシンジッパー型の転写調節因子で、機能不明とされてきたものである。E4BP4はIL-3依存性細胞をIL-3存在下で培養した際には強く発現しているが、IL-3の除去によって発現量は速やかに減少する。また強制発現させることによって、これらの細胞がIL-3非存在下で起こすアポトーシスを抑制することが明らかとなった。この際、細胞周期には変化は認められなかったことから、本転写因子はIL-3がアポトーシスを抑制する信号伝達経路にのみ関与するものと考えられた。なお本因子の発現はIL-3受容体からrasを介した経路(主経路と考えられる)とrasを介さない経路の少なくとも二経路によって制御されていることが判明した。後者は細胞周期の影響を受けるようである。 もう一方の転写因子はCREB/ATF転写因子群に属するもので、細胞周期がG0/G1期に停止している細胞特異的にアポトーシスを誘導するようであるが、詳細はなお検討中である。
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