研究概要 |
N.glaucaにはAgrobacterium rhizogenesのrol遺伝子群と高いホモロジーを有するNgrol遺伝子群が存在し、Nicotiana属の進化の初期にA.rhizogenesより転移したと考えられている。本研究では、Ngrol遺伝子群と遺伝的腫瘍形成との関連を検討し、今までにNgrolB,NgrolCの他にNgORF13,NgORF14も保存されており、これらの遺伝子はすべて遺伝的腫瘍で発現していることを明らかにした。また、GUSをレポーター遺伝子としたトランスジェニックF1植物の解析から、NgrolBは分裂組織の形成と、また、NgrolCは維管束組織の分化と関連して発現することを示した。本年度はコード領域も機能を保持しているかについて検討した。A.rhizogenesのRirol遺伝子群(RirolB,RirolC,RiORF13,RiORF14)の導入は多くの植物に毛状根を誘導するが、Ngrol遺伝子群(Ngro1B,Ngro1C,NgORF13,NgORF14)にはこの作用は認められなかった。Riro1BをNgro1Bで置換するとRiro1遺伝子群の毛状根形成機能が失われるので、Ngro1遺伝子群が毛状根を形成しないのはNgro1Bが原因と思われる。Riro1Bは単独でも毛状根を誘導するが、Ngro1C,NgORF13,NgORF14はRiro1C,RiORF13,RiORF14と同様にRiro1Bの働きを促進した。NgORF13単独でもこの促進効果を示す。一方、35S-NgORF13を導入したタバコトランスジェニック植物でも葉の縦方向への伸長抑制が見られ、少なくともNgORF13はコード領域も機能を維持していることが明らかになった。
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