これまでの研究により色素体DNAと結合し核様体を形成するタンパク質CND41のcDNAを単離するとともに、その発現の解析よりCND41が葉緑体遺伝子発現における負の制御因子として作用していると推察するに至った。この推論を証明するため、昨年度アンチセンスDNAベクターを構築するとともに、タバコの形質転換体約40株を確立し、これらのうちよりCND41の蓄積が野性株に比べ1/3程度に低下している形質転換体を数株得た。本年度はさらに上記形質転換体から再度培養細胞を誘導し、その表現型を観察した。その結果、アンチセンス培養細胞株は容易に緑化しやすい傾向を示すとともに、いくつかの葉緑体遺伝子転写産物の蓄積が増大していることを確認した。 一方、昨年度CND41の蓄積を詳細に解析した結果、CND41には分子量が微妙に異なる3種類のアイソフォームが存在することが明らかとなった。本年度は、これらCND41各アイソフォームの生化学的活性を評価するために、これらアイソフォームの精製法を検討した。その結果、タバコ緑色培養細胞を50mMリン酸緩衝液で磨砕した後、遠心分離した不溶性画分を500mMNaCLを含む緩衝液で抽出することにより、CND41を可溶化できること、さらにこの粗CND41画分を陽イオンカラムクロマトグラフィーで精製することにより、高度に精製されたCND41‐IIが得られる条件を確立した。
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