(1)構成的な転写活性化能をもつ改変Athb‐1(HDZipl‐VP16)を形質転換タバコ内で発現すると、柵状組織の形成阻害や暗所における葉の展開など葉に特異的な形態的変化が引き起こされる。さらにHDZip1‐VP16にグルココルチコイド・レセプターのレセプタードメインを付加し(HDZipl‐VP16‐GR)、タバコ内に導入することにより上記の形態的変化を人為的に誘導することができる。このHDZipl‐VP16‐GRをタバコBY‐2細胞に導入し、ディファレンシャルディスプレイ法を用いてAthb‐1 DNA結合ドメインの標的遺伝子の検索を行った。その結果、ヒストンH3と相同な遺伝子および機能が未知の2つの遺伝子が同定された。これらの遺伝子が本来どのような状況において発現されるものであるかを解析中である。 (2)パーティクルボンバードメント法による実験から、Athb‐1のDNA結合ドメインのC端側に存在する酸性アミノ酸に富んだ領域が非常に強い転写活性化ドメインとして働くことが明らかになった。しかし、タバコにおいてAthb‐1はHDZipl‐VP16に較べて弱い表現型しかもたらさない。Athb‐1による表現型は低温下において強められることと併せて、Athb‐1の転写活性化能は何らかの形で負に制御を受けていると考えられる。 (3)HDZipl‐VP16‐GR遺伝子およびHDZip2‐VP16‐GR遺伝子を導入した形質転換アラビドプシスを作成した。HDZipl‐VP16‐GRを有する形質転換体では、子葉および葉の短軸方向における伸長阻害、暗所における子葉および葉の展開など、葉の形態形成に関する変化がグルココルチコイドの添加により誘導された。HDZip2‐VP16‐GRを有する形質転換体では、明所、暗所ともに胚軸の伸長阻害および水平方向への肥大成長が誘導された。Athb‐2を35Sプロモータにより強制発現させた形質転換体では胚軸の伸長が促進されること、およびHDZip2‐VP16‐GRは誘導時において強い転写因子として働くと考えられることから、Athb‐2そのものは負の転写因子である可能性が示唆された。
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