研究概要 |
成人型早老症Werner症候群に発生した腫瘍,特に骨肉腫および甲状腺癌の性質を調べた. 1.Werner症候群に発生した骨肉腫8例には以下の特徴が見られた.(1)Werner症候群の骨肉腫では,対照と異なり女性優位であった.(2)年齢が平均46歳と高く,一般の骨肉腫(平均24歳)と好対照であった.(3)発生部位が典型的でないものが多かった.(4)組織亜型がosteoblastic type以外が半数を占めた. 2.新鮮腫瘍組織を入手できた1例についてp53遺伝子の突然変異を検討した結果,変異を認めなかった.またこの患者のWRN遺伝子におけるgermline mutationを検討した結果,わが国,外国共にまだ報告のない新しいmutationであった. 3.Werner症候群に発生した甲状腺癌24例を臨床病理学的に検討して一般例と比較した.その結果,(1)平均年齢は39歳で,対照群より10歳若い,(2)対照群より女性が少ない,(3)組織型では,濾胞癌がはるかに多い,(4)未分化癌が増加という特徴が見られた. 4.Werner症候群に発生した骨肉腫と甲状腺癌は,一般のものとやや異なっており,発癌メカニズムの違いを示唆していた.
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