研究分担者 |
清宮 啓之 癌研究所, 化学療法センター, 研究員 (50280623)
檜山 桂子 広島大学, 医学部, 助手 (60253069)
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 助教授 (60245876)
清水 素行 鳥取大学, 医学部, 助教授 (80130756)
石川 冬木 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (30184493)
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研究概要 |
テロメラーゼ活性は,ヒト体内では生殖巣にのみ強い活性があり,増殖の幹細胞を含む再生系組織は弱い活性をもつが,その他の大部分の組織には活性がない。これに対して癌組織は強い活性を示すものが多いことから,テロメラーゼは癌診断の新しいマーカーとして,また,制癌剤の新たなターゲットとして注目されている。しかし,癌診断に不可欠の定量的測定に関する現在のテロメラーゼアッセイ法には種々の問題があるため,この1年間で,問題点をほぼ解決できる実用的なTRAP/HPA法を開発した。すなわち,1)操作が簡単で測定時間が短縮される,2)測定結果が数値として得られる,3)放射性同位元素など特殊な試薬・設備が不必要である,4)きわめて感度が高い,5)広範囲の酵素濃度で直線性が得られる,6)組織中にあるアッセイ阻害物質の影響が軽減できる。これにより,テロメラーゼ発現の定量的測定が改良され,多くの定量的データの集積が可能になり,癌の早期診断への適用に大きく寄与するものと期待される。テロメラーゼ酵素の分子生物学的進歩として,テロメラーゼ複合体のコンポーネントの一つであるTLP-1のcDNAがクローニングされた。これは酵素活性を担うものではなく,活性調節にかかわるものと考えられる。さらに,テロメラーゼの酵素活性を担う触媒サブユニットであるhTRTもクローニングされた。正常細胞へのhTRTの導入によってテロメラーゼ活性が発現すること,逆転写酵素モチーフに変異を導入したものには活性がないこと,発現は培養細胞でも癌組織でもテロメラーゼ活性と非常によく相関することがわかった。これにより,テロメラーゼに関する分子生物学の飛躍的な進展が期待されるとともに,これをもちいたテロメラーゼのin situ検出の道がひらけた。
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