研究分担者 |
阿部 達生 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (60079746)
広沢 信作 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (50143574)
森 茂郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30010424)
瀬戸 加大 愛知がんセンター, 研究所, 部長 (80154665)
大木 操 国立がんセンター, 研究所, 部長 (00158792)
|
研究概要 |
転写関連遺伝子2個(ABI-1およびGCT-1)を新たに単離/同定した。FUS,MEN,MLL,BCL6遺伝子ならびに、これらのキメラ遺伝子について遺伝子構造と機能の解析を行い、各遺伝子の造腫瘍性に関する機序を明らかにした。分子病態研究面では、染色体分析でt(10;11)を認めても遺伝子解析ではMLL-AF10,CALM-AF10,MLL-ABI-1の3種のキメラ形成が存在しており、また、前2者では予後不良、第3番目のそれは予後良好であることが判明した。初診時におけるRTPCRによるキメラ転写産物の同定が重要であることを明らかにした。診断技術開発の面では骨・軟部組織腫瘍のうちEwing肉腫や横紋筋肉腫で新鮮細胞・パラフィン包埋材料から48時間以内に遺伝子診断可能であることを示した。また、SKY-FISH法が腫瘍細胞の染色体分析に、より精度の高い結果をもたらすことを実証した。 本研究班の基軸の1つは、転座関連遺伝子の基礎的研究とその臨床診断への応用であり、もう1つは白血病における転座診断技術を突破口として肉腫・癌へ、その適用を発展させることにある。このため本班では班員間の共同研究推進を積極的に行った。過去3年間に延べ21の班員間共同研究が成立し、延べ16の研究者間での検体ないしプローブの提供が行われた。これらの成果は、1998年に5編の共同研究論文が発表された。各個研究では、インパクトファクター(IF)5.0以上が22編、5.0未満が50編、発表されており、質的に高い論文が32%を占めた。過去3年間のこの班による発表は共同研究が22編、各個研究が198編、総計220編となった。転座型白血病の原因遺伝子の単離・同定とともに、遺伝子構造/機能解析ならびに分子病態研究は実りの多いものとなった。またFISH法による基礎研究成果の素早い臨床応用への展開成果は、今後の精度の高い診断、ひいては治療方針や予後推定に役立ち、先行指標の確立に役立ったと確信する。
|