研究概要 |
本研究では、陸と海の動植物、微生物を素材として、従来の殺細胞活性に加えて、新しい分子標的(チロシンキナーゼ、チューブリン、P-糖蛋白質など)をスクリーニングに加え、新しい作用機序をもつ抗がん剤の探索と開発を目的とする。本年度は以下のような結果を得た。 日本産イチイTaxus cuspidataの抽出物からTaxuspineK〜Wを単離し、化学構造を明らかにした。ヒト卵巣癌の耐性発現株2780AD細胞において、Taxuspine Mはベラパミルよりやや弱いビンクリスチンの蓄積増強作用を示した。一方、Taxuspine SとTには、チューブリン脱重合阻害活性が幾分認められた。また、Taxuspine Q,S,Tは顕著な殺細胞活性を示した。放線菌Nocardia brasiliensisより単離したBrasiliquinone Cにチロシンキナーゼ阻害活性(EGFレセプター、IC_<50>2.1×10^<-6>M;c-erbB-2、IC_<50>2.1×10^<-5>Mが認められた。また、海綿Jaspis stelliferaより単離したJaspiferalA,Bには、Cキナーゼ阻害活性(IC_<50>2.7×10^<-6>M)が認められた。渦鞭毛藻より単離した新規マクロリドAmphidinolide Q、海綿より分離した新規アルカロイドKeramaphidin BおよびManzamine L、新規ノルテルペノイドJaspiferal AおよびB〜C、新規アゼチジンアルカロイドPenaresidin AとB、放線菌より単離した新規ベンツアントラキノン化合物Brasiliquinone A,B,Cには、マウス白血病細胞L1210およびヒト上皮癌細胞KBに対して殺細胞活性が認められた。
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