研究目的:我々はT細胞エピトープの同定に、いままでの方法とは異なった方法、すなわちMHCクラスI分子に結合する自己抗原ペプチドのモチーフよりCTLエピトープを同定する方法(リバース・イムノジェネティックス法)を以前に確立した。この方法を用いてHLAクラス1分子が提示するC型肝炎ウイルス蛋白由来のCTLエピトープを多数同定し、さらにこれらのエピトープに対するCTLクローンを作製してCTLのエピトープ認識を詳細に検討する。 研究成果:HLA-B^*3501ペプチドモチーフに一致したC型肝炎ウイルス蛋白質由来の53種類の8-merから11-mer長さのペプチドより、RMA-S-B^*3501細胞を用いたペプチド結合法により、28種類のHLA-B^*3501結合ペプチドを同定した。このペプチドを用いて、HLA-B35をもあった急性C型肝炎患者の急性期の末梢リンパ球を刺激し、細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導を試みた。5種類のペプチドが特異的CTLを誘導した。ペプチド特異的CTLクローンを作製して、これらのCTLクローンがHCV・ワクチニアリコンビナントウイルスを感染させた細胞を特異的に傷害するかを調べたところ、1種類のペプチドに特異的なCTLクローンのみが、細胞傷害活性を示した。このことより、このペプチド(HPNIEEVAL)のみがHLA-B^*3501分子に提示されるC型肝炎ウイルスのCTLエピトープと同定できた。このエピトープに対する細胞傷害活性は急性肝炎の急性期に見られたが、回復期には消失していた。また慢性肝炎患者には見られなかったことより、急性肝炎で強く認識されるエピトープの可能性が示唆された。
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