肺がんの薬剤耐性と転移因子を分子標的とした免疫遺伝子治療

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08266242
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 曽根 三郎 徳島大学, 医学部, 教授 (40145024)
• 研究分担者: 篠原 勉 徳島大学, 医学部附属病院, 助手 (70284289) ; 楊河 宏章 徳島大学, 医学部附属病院, 助手 (50263827)
• キーワード: 肺癌 / 転移モデル / P糖蛋白質 / ガンクリオシドGM2 / モノクローナル抗体 / ADCC / NK細胞 / サイトカイン

研究概要

臨床を反映した肺癌の遠隔転移モデルの作製と癌関連抗原を標的とした遠隔転移の分子生物学的制御について検討し、以下の諸点を明らかにした。
1. NK活性欠損のSCIDマウスに組織型が異なるヒト肺癌細胞を経静脈的に移入することにより、多臓器転移モデルを確立した。また、左心室腔内への接種による骨転移モデルも作成した。
2. MCP-1、M-CSF、IL-10、CD82遺伝子導入ヒト肺癌細胞の転移能を上記モデルで検討した結果MCP-1遺伝子導入は転移形成に影響しなかったが、M-CSF、IL-10遺伝子導入は転移臓器の微小環境条件により異なった転移形成能を示し、CD82遺伝子導入はNK細胞の除去により血行散布を促進した。
3. 抗P糖蛋白抗体がマクロファージの抗体依存性細胞傷害反応(ADCC)を誘導しNK欠損SCIDマウスにおいて多剤耐性ヒト肺癌の遠隔転移形成を抑制すること、さらに癌細胞へのMCP-1、M-CSF遺伝子導入が抗P糖蛋白抗体の治療効果を増強することを明らかにした。
4. 小細胞肺癌に高発現しているガングリオシドGM2に対するマウス・ヒトキメラ抗体がADCCを誘導し、小細胞性肺癌の遠隔転移形成を抑制することを示した。
5. 臨床症例において肺癌の癌性胸膜炎に対するIFN-γ局所療法の有効性を示し、キラー誘導サイトカイン(IL-2,IL-12,IL-15)による肺癌患者リンパ球のキラー活性とTh2サイトカイン産生能の相違を明らかにした。
6. LAK細胞はマクロファージに対してと同様に樹状細胞に対しても障害作用を示し、その活性はIL-2-LAKでより高かった。
7. キノロン誘導体のMS209がサイクロスポリン及びベラパミルとの併用により肺癌細胞の多剤耐性を相乗的に克服することを示した。
以上、癌関連抗原に対する抗体療法とサイトカイン遺伝子導入の併用による集学的治療の可能性を検討してきた。今後は、骨転移、脳転移モデルでの検討、in vivoでのサイトカイン遺伝子導入のためのベクターの開発を進めていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Hiramatsu,K. et al.: "Generation of killer activity by interleukin-12 of mononuclear cells in malignant pleural effusions due to lung cancer" Cancer Immunol Immunother. 46. 1-6 (1998)
• [文献書誌] Takeuchi,E. et al.: "Comparative analysis of interleukin 15 and interleukin 2 for induction of killer activity and of type 2 cytokine production by mononuclear cells from lung cancer patients" Br.J.Cancer. 78. 616-620 (1998)
• [文献書誌] Hanibuchi,M. et al.: "Therapeutic efficacy of mouse-human chimeric anti-ganglioside GM2 monoclonal antibody against multiple organ micrometastases of human lung cancer in NK cell-depleted SCID mice" Int.J.Cancer. 78. 480-485 (1998)
• [文献書誌] Shrivastava,P.et al.: "Circumvention of multidrug resistance by a quinoline derivative,MS-209,in multidrug-resistant human small-cell lung cancer cells and its synergistic interaction with cyclospirin A or verapamil" Cancer Chemother Pharmacol. 42. 483-490 (1998)
• [文献書誌] Pai,K.et al.: "Different effect of Interleukin 10 on Interleukin 12-and Interleukin 2-Mcdiated Killer Induction From blood Mononuclear Cells" Oncol.Res.10. 295-300 (1998)
• [文献書誌] Nokihara,H.et al.: "Monocyte chemoattractant protein-1 gene modification of multidrug-resistant human lung cancer enhances antimetastatic effect of therapy with anti-P-glycoprotein antibody in SCID mice" Int.J.Cancer. 80. 773-780 (1999)