研究概要 |
ラットに化学発癌物質であるDMBAを投与して作製した悪性線維性組織球腫や、グリオーマ、乳癌等のラット由来培養癌細胞の移植腫瘍を用い、マクロファージ亜群を認識する種々の抗体を用いてマクロファージの浸潤を免疫組織化学的に検索した結果、浸潤マイクロファージはRM-1,RM-4などの汎マクロファージ抗体と共に、TRPM-3に陽性を示し、単球由来の滲出マクロファージが主体と考えられた。これに対し、ED2,Ki-M2Rに反応する組織在住マクロファージの浸潤は、少数であった。次に、これらのラット腫瘍細胞培養上清や担癌ラット血清を用いて、サンドイッチELISAを行うと共に、腫瘍組織のNorthern blottingを施行すると、TRPM-3陽性の単球由来のマクロファージの浸潤がMCP-1の産生量と密接に関連することが明らかとなった。また、免疫染色やin situ hybridizationでは、腫瘍細胞や浸潤マクロファージからのMCP-1の産生が認められた。 そこで、MCP-1とTRPM-3陽性マクロファージの浸潤との相関を見るため、リコンビナントラットMCP-1をラット皮下に投与して、浸潤マクロファージ亜群を解析すると、その多くがTRPM-3に陽性で、MCP-1によって主にTRPM-3陽性マクロファージが誘導されることが確認された。 更に、TRPM-3陽性の単球由来のマクロファージの浸潤と腫瘍増殖との関連を明らかにするため、MCP-1産生量の異なる種々のラット悪性線維性組織球腫細胞株を背部皮下に移植し、腫瘍増殖とマクロファージ浸潤の程度を検索した。その結果、MCP-1の産生量が多く多数の単球由来マクロファージの浸潤を伴う腫瘍ほど、増殖速度が遅く、TRPM-3陽性マクロファージが腫瘍増殖に抑制的に働くことが示唆された。
|