ガン治療において行われる放射線照射、化学療法は、ともに骨髄由来の顆粒球などを減少させるが故に患者は顆粒球減少症に伴う感染の危険にさらされる。これを防ぐためには骨髄移植が一つの方法であるが、移植骨髄の拒絶が問題である。この拒絶には通常のT細胞が関与するのではなくNK細胞が関与すると考えられてきたが、最近の研究からはNK細胞とT細胞の療法の特質を持ったNKT細胞群の関与も示されている。NKT細胞はT細胞受容体と共にNKRP-1分子を発現するT細胞として定義されるが、最近の研究からはこのような細胞群にいくつもの生物活性を持つことが示唆され、特に移植骨髄片の拒絶に関わる細胞群を同定することが重要と考えられる。本年度はマウスを用いこのNKT細胞の分化制御機構、そのエフェクター細胞の誘導機構を明らかにすることを目的とし、以下の諸点を明らかにした。1)NKRP-1分子の発現は、CD4とCD8のどちらも発現しないいわゆるダブルネガティブT細胞分画において自己のMHCならびに自己抗原を認識することによって誘導される。2)胸腺内において分化したNKT細胞は末梢の脾臓や肝臓に主として移動し、リンパ節には少数しか移動しない。一方末梢のNKT細胞は胸腺に移動することはない。3)MKT細胞に発現する低親和性IgG受容体CD16は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性には必須であるがNKT細胞の分化やそのNK活性には必要ではない。4)インターロイキン2によって誘導されるNK1.1陽性かつT細胞受容体陽性LGL(別名T-LGLあるいはT-LAK)はダブルネガティブT細胞中のNKRP-1陰性細胞から分化する。今後、これまでに作成したモデルマウス系を用い、移植骨髄片の拒絶にかかわるエフェクター細胞がNK細胞であるかあるいはNKT細胞であるかを検討する予定である。
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