乳癌の遺伝子診断

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08266264
• 研究機関: 日本医科大学
• 研究代表者: 江見 充 日本医科大学, 老人病研究所, 教授 (90221118)
• 研究分担者: 飯田 有俊 日本医科大学, 老人病研究所, 助手 (10277585) ; 塚元 和弘 日本医科大学, 老人病研究所, 講師 (30253305)
• キーワード: 乳癌 / がん抑制遺伝子 / 染色体欠失 / LOH / 遺伝子診断 / 予後因子

研究概要

乳癌における染色体欠失(LOH)と術後予後との関連を検討し、予後因子として有用となり得るDNAマーカーを選定するために、乳癌根治術後、死の転帰をとった死亡群57例と術後5年以上の生存群95例との間で24ヵ所の染色体領域に存在する33ケのDNA多形性マーカー座におけるLOHの頻度を比較検討したところ、24領域のうち7領域において、生存群に比べ死亡群において有意に高頻度なLOHを検出した。次に、術後5年以上経過した264症例を対象にLOHの有無を調べ、生存率との関連を比較検討した。検討した18領域のうち4領域においてLOH(-)群に比べLOH(+)群において有意に不良な予後がKaplan-Meier解析およびLog-lank検定において認められた。また、これらの複数の領域においてともにLOHを示した症例では、さらに有意な生存率の低下を認め、これらの症例では5年後の乳癌の術後再発死亡の相対危険率は、LOH(-)群に較べ、8〜10倍に上昇することが明らかとなった。本研究により、特定の染色体領域におけるLOHの有無と術後予後との間に有意な相関が認められることが判明した。特に、3領域でLOH(-)の症例が全例生存しているのに比べ、ともにLOH(+)の症例の5生率は57%と著しく不良であった。本研究で用いたDNAマーカーによる手術時の切除乳癌の遺伝子診断は乳癌における予後の判定において大変有用であり、実用に耐えることがレトロスペクティブ研究およびプロスペクティブ研究の両面から実証された。今後、実用化へのプロトコールの検討・開発をすすめたい。

研究成果

• [文献書誌] Emi,M.,Mastumoto,S.,et.al.: "Correlation of Allelic Losses and Clinicopathological Factors in Primary Breast Cancers." Breast Cancer. 4. 243-237 (1997)
• [文献書誌] Emi,M.,Mastushima,M.,et.al.: "Multiplex mutation screening of the BRCA1 gene in 1000 Japanese breast cancers." Jpn.J.Cancer Res.89. 12-16 (1998)
• [文献書誌] Tsukamoto,K.,Emi,M.,et.al.: "Allelic loss on chromosome lp is associated with progression and lymph node metastasis of primary breast carcinoma." Cancer. 82. 317-322 (1998)
• [文献書誌] Iida,A.,Emi,M.,et.al.: "Mapping of a new target region of allelic loss to a 2-cM interval at 22q/3.1 in primary breast cancer." Genes,Chrom.Cancer. 21. 108-112 (1998)
• [文献書誌] Matsumoto,S.,Emi,M.,et al.: "Detailed deletion mapping of chromosome arm 3p in breast cancers." Genes,Chrom.Cancer. 20. 268-274 (1997)
• [文献書誌] Yokota,T.,Emi,M.et al.: "Mapping of a breast cancer tumor suppressor gene locus to a 4-cM" Jpn.J.Cancer Res.88. 959-964 (1997)