研究概要 |
癌の悪性度の把握は、術後再発の予測や治療方針の選択のために必要不可欠であるが、個々の癌により差があり正確な把握は困難である。本研究は乳癌切除例を用いたヒト染色体領域の染色体欠失の解析により術後再発、生存率に相関する染色体欠失領域を同定し、乳癌術後予後遺伝子診断法の確立を目的とした。 乳癌における染色体欠失(LOH)と術後予後との関連を検討し、予後因子としての重要性を確認した。これまでの264例の検討によりヒトゲノムの4領域のLOHが生存率を有意に低下させることを述べてきたが、今日、対象を504例に増加し、観察期間を延長し、再発率、生存率の両面から検討を加えた。術後術後再発率に関しては、3p25.1,8p21-22,13q12,17p13.3,22q13の各々の領域に欠失を認めた症例で、高頻度に術後再発の起こることが判明した。また、術後生存率に関しては、1p34,13q12,17p13.3,17q21.1に加えて、新たに3p25.1,8p21-22の2領域について、各領域に欠失を認めた症例で、癌死による術後生存率の低下を認めた。多変量解析ではt(腫瘍経),n(リンパ節転移)同様1p34-35,3p25.1,17p13.3のLOHが独立した予後因子であり、各領域のRetentionに対するLOHの死亡に関する相対危険度は2.0-2.1であった。
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