(1)一般乳癌におけるBRCA2遺伝子の役割を検討するため体細胞レベルの変異を解析した。一般乳癌100例中、1例の体細胞レベル、および2例の生殖細胞レベルの変異を同定し、BRCA2の一般乳癌における変異はBRCA1と同様、非常に稀であることが判明した。また、生殖細胞レベルの変異を持つ症例のうち1例は349塩基のAlu elementの挿入によるものであり、これはAlu elementがretrotransposal eventとしてBRCA2遺伝子に組み込まれたものであること、さらにAlu elementが挿入したエクソン22は転写産物内では欠失し、その結果、フレームシフトによりすぐ下流にストップコドンが出現することから、Alu elementの挿入がエクソンスキッピングを引き起こし遺伝子を不活性化させることを明らかにした。 (2)日本の家族性乳癌家系の遺伝子診断を行うためには、日本人乳癌家系における原因遺伝子変異の頻度や種類、浸透率、さらに変異陽性症例の臨床病理学的特徴が非常に重要な情報となる。そこで、これらの情報を明らかにすることを目的として家族性乳癌と判断された日本人家系78症例に対し、BRCA1、BRCA2遺伝子の変異をスクリーニングし、BRCA1遺伝子の変異15例、BRCA2遺伝子の変異15例、合計30例(30/78、38.4%)を同定した。その中でミスセンス変異はBRCA1、BRCA2ともに8例(8/15、53%)であり欧米に比べ高頻度であることが明らかになり、これらの結果からBRCA1、BRCA2遺伝子の乳癌への関与には人種差が存在することが確認された。
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